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幸せになるという最適化問題

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幸せになるというスキル

仕事とは,他者の要求を満たすことです。従って,仕事で成功するためには,他者は何を求めているのかを知り,その要求を最大限満たす方法を探す必要があります。

一方,幸せとは,自分の要求を満たすことです。従って,幸せになるためには,自分は何を求めているのかを知り,その要求を最大限満たす方法を探す必要があります。

仕事で成功するには,「他者の要求を最大限満たす」という最適化問題,幸せになるには,「自分の要求を最大限満たす」という最適化問題を解く「スキル」が必要なのです。

スキルの良いところ

人生は,幸せになるという最適化問題を解く「スキル」を高めるプロセスだ,という考え方には,さまざまな良いところがあります。

例えば,人生におけるあらゆる経験は,失敗も含めて,スキルを磨くのに役立つと思えます。そう思えたとき,人は失敗を恐れずに挑戦し,過去を肯定することができます。

さらに,今幸せでないのは,他者や運命ではなく,スキルの未熟さのせいだと思えます。そう思えたとき人は,他者を憎んだり運命を嘆いたりせず,スキルを磨こうと思えます。

 

スキルを高めるには 

幸せになるスキルには⑴ 自分の要求を定義する ⑵ その要求を最大限満たす方法を探す,という要素があります。

抽象化:自分の要求を定義する

人は動物であるため,食欲・性欲・睡眠欲などを持っています。また,人は社会的動物でもあるため,承認要求*1・自律要求*2などを持っています。さらに人は,「人生の意味を追求したい」「創造性を発揮したい」など,高等な要求を持っています。

このように人は,個人差の小さい低次の要求から,個人差の大きい高次の要求まで,さまざまな要求を持っています。自分の要求を定義すること = 抽象化とは,自分はどのような要求を持っているのか,そして,自分にはどの要求が重要なのか,を知ることです。

他者による抽象化

まずは,専門知や集合知を活用すると良いでしょう。様々な方法がありますが,ここで紹介したいのは Myers-Briggs Type Indicator (MBTI)という検査です。日本ではなじみがありませんが,欧米では,キャリアカウンセリングなどで広く使われている検査です。

この MBTI を自己診断できるようにした本に Do What You Are があります。なぜこの本を薦めるかと言うと,自分自身が受けて,あまりの的確さに衝撃を受けたからです。とにかく一度受けてみることをおすすめします*3

自己による抽象化

その上で,自分自身の経験を参照します。過去の経験を振り返り,現在の生活を記録し,または,新しいことに挑戦して,自分がどんなことに喜ぶのか,抽象化します。

この際,抽象的に定めるのが重要です。具体的だと,柔軟性がなくなるためです。例えば,自分は「研究をすること」が好きだ,という定義は具体的すぎます。「社会に貢献する」のが好きなのか,「知的好奇心を満たす」のが好きなのか,など深掘りします。

こうすると「その要求は,別にその方法でなくても実現できるのでは?」と気付くことがあります。とりわけ,その方法がさまざまな困難を伴う場合,この点は重要です。

 

最適化:要求を最大限満たす方法を探す

幸せになるスキルの2つ目は,定義した要求を最大限満たす方法を探す,最適化のスキルです。ある要求と,他の要求が衝突することは良くありますが,その際,部分最適に陥るのではなく,全体最適を実現するスキルが必要です。

他者による最適化

先と同様,まずは専門知や集合知を参照します。キャリア選択の話で言うと,例えば Do What You Are には,どのような仕事が向いていて,どのような仕事は向いていないか書いてあります。また,就職・転職エージェントを使うのも一つの手です。

自己による最適化

その上で,プロトタイピングを行います。プロトタイピングとは,商品開発において,あるアイデアを具現化するプロトタイプを何種類も作り,どれがより効果的にアイデアを具現化しているか見定める過程のことを指します。

幸せになるという最適化問題においては,自分の要求を具現化する方法を何種類も試し,どの方法がより効果的かを見定ます。キャリア選択の話で言うと,インターンはプロトタイピングの典型です。

ただ,全ての方法を自分で経験するのは不可能なので,他者の話を聞いて追体験するのもありです。例えば,実際にその会社で働いている人に話を聞いたり,会社の口コミサイトの情報を見て,自分に合いそうかどうか判断します。

プロトタイピングが重要なのは,現実は予想を超えるためです。例えば,知的好奇心を満たすのが好きだから研究者,と思っていたとしても,ある程度大学院で研究してみて,実は論文を書くのが好きになれないことに気付くかもしれません。

 

幸せになるためのコツ

人によって,要求の種類や程度は異なるので,幸せになるという最適化問題には,決まった解法はありません。しかし,ほとんどの場合によりよい結果を導く,コツのようなものは存在します。ここでは少しそのコツを紹介します。

自分の要求を継続的に満たす方法を選ぶ

まず,幸せになるという最適化問題においては,要求を「継続的に」満たす方法を選ぶべきです。

例えば,何かにお金を使うときは,モノより記憶に投資します。モノには慣れてしまいますが,記憶はずっと楽しめるからです。また,人を選ぶときは,外見より中身を重視します。 外見は必ず衰えますが,中身が変わることは少ないからです。

また,承認要求を継続的に満たす,つまり,身近な他者と継続的に交流する,のも大事です。この要求は,幸福感に非常に強い影響を与えることが分かっているからです。このことに関しては以下のエントリーで詳細に論じました。

yuji-log.hatenablog.com

承認要求が直接的な他者との交流によって満たされないとき,人は名声,地位,知名度など,「自分が集団に受け入れられるべき人間であることを示す特徴」によって代償しようとします。しかし,そのような特徴によっては,継続的な幸せは得られません。

また,そのために他者基準の行動原理*4に従ってしまうと,本当に自分のやりたいことをやる,という幸せが得られなくなります。

従って,身近な他者と継続的に交流する空間を作り,そこで承認要求を満たすことが,とても大切なのです。「承認要求を満たす」という言葉はネガティヴに聞こえるかもしれませんが,とても大切なことです。

最適化の役に立たない行動はやめる

自分の意思で変えることができない対象 --- 他者・過去の自分・才能・運命 --- にネガティブな感情を向けるという行為は,それが最適化の役に立たず,時間だけを浪費するという点で,意味がありません。意味がない感情は,理性で捨て去ります。

他者を憎むこと・妬むこと,過去の自分を責めること,才能のなさ・不幸な運命を嘆くことには,意味がありません。全て,今後の自分の人生を改善しないという点で,無駄です。無駄なことはやめるべきです。

その代わり,どういう未来を実現したいのか,どういう自分になりたいのか,を問い直し,そのために「いま,できること」を見定めます。そして,それを実行するのです。

 

幸せになるという決意

幸せになるという最適化問題の希望は,いつでも修正ができることです。未来を完全に見通すことは不可能なため,この問題を解くにあたっては,ある時間スパンの中で最適化を行い,うまくいかなかった部分は修正する,ということを繰り返すしかありません。

最初に運命が決まっているのではないのです。今まで幸せではなかったとしても,関係ありません。幸せになる,と決意した瞬間に,人は幸せへの道を歩み出すことができます。

 

 

 

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*1:他者に承認されたいという要求。他者に尊敬されたい,軽蔑されたくない,好かれたい,嫌われたくない,という要求。

*2:他者にコントロールされたくないという要求。自分の意思によって行動したいという要求

*3: 英語版 Wikipedia には,MBTI が科学的でないという批判がありますが,宗教のように盲信しなければ良いだけで,示唆を得る分には十分有益であると思います。

*4:他者の好意を得るために,他者と同じことをする(人がやるから自分もやる・人がやらないから自分もやらない)または,他者の尊敬を得るために,他者と違うことをする(人がやるから自分はやらない・人がやらないから自分はやる)という行動原理。