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好きなことを仕事にするのは良いことか

なんとなく動機付けに興味を持って Edward Deci 達の自己決定理論(self-determination theory)の論文を読んだ*1

この理論によると,人間の動機は,

内発的動機付け(intrinsic motivation):活動自体に対する満足を報酬とする動機

外発的動機付け(extrinsic motivation):活動とは分離した結果を報酬とする動機 

に分類される。ここまでは良くある話。

この理論は,自律性(autonomy)*2の程度に応じて,外発的動機付けを更に細分化する。そして,内発的動機付けは最も自律性が高いとみなす。

外発的動機付け(活動自体が楽しいわけではない)

- 外発的調整(external regulation)

   - 外的な圧力。例:報酬を求めて,または,罰を恐れて,何かを行う。

- とり入れ的調整(introjected regulation)

   - 内的な圧力。例:自尊心を求めて,または,恥・罪悪感を恐れて,何かを行う。

- 同一視的調整(identified regulation)

   - 活動の有用性を認める。例:「〜すると良いことがある」

- 統合的調整(integrated regulation)

   - 活動を自分の一部とみなす。例:「〜しないと自分じゃないみたい」

内発的動機付け(活動自体が楽しい)

内発的動機付けを頂点として,動機付けに自律性を軸としたグラデーションがあるということである。そして,この理論は,自律性の要求(Need for Autonomy)を人間の基本的要求とみなし,そのような要求に基いた動機付けがより好ましく,有効であるとする。

お金・締め切り・査定など,自律性を低める要因は,動機付けの内発性を低めることが分かっている。例えば,自発的にパズルを楽しんでいた大学生に,金銭的報酬を与えると,自発的にパズルをしなくなったという実験がある。逆に,選択肢の多さ・自律性を支援する態度など,自律性を高める要因は,動機付けの内発性を高めることが分かっている。

このところを読んで考えたのだけど,通常「仕事」とは,まさに活動に対して「お金,締め切り,査定」を与えるシステムである。ということは,もともと内発的に行っていた活動でも,仕事という枠組みに入った瞬間,内発性が減少するということになる。

世間では「好きなことを仕事にしよう」という言説が支配的だが,本当に好きでい続けたいことは仕事にしない方が良いのではないか。好きなことを仕事にすると,本来は好きでやっていたのに,お金のため,承認のためのように感じてしまうのではないか。

こんなことを漠然と思った。

 

あわせて読みたい

 

 

*1:Deci E & Vansteenkiste M. 2004. Self-determination theory and basic need satisfaction: understanding human development in positive psychology. Ricerche di Psicologia

*2:行為の主体であるという感覚,自分が意思を持って選択しているという感覚