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不安型の恋愛:自己肯定できない人々の悲しい運命

アタッチメント理論によると,アタッチメント・スタイルには安定型・不安型・回避型があり,人々の約 56% が安定型,24%が不安型,20%が回避型*1に属するのですが,不安型と回避型の人は,恋愛において注意が必要です。

回避型の恋愛については以前説明しましたので,今回は回避型について説明します。

別のページに,アタッチメント・スタイルを判断するための質問項目を用意したので,自分または気になる人のスタイルを調べてみると面白いでしょう。

 

不安型:自分には価値がない

人々は幼い頃の他者との関係によって,「他者に対するイメージ」と「自己に対するイメージ」を形成します。前者は「他者は,自分が助けを求めたとき助けてくれるのか」,後者は「自己は,他者が助けてくれるような対象なのか」に関するイメージです。 

不安型の人は,このうち,自己に対するイメージが否定的であり,「自分は,他者が助けたいと思うような存在ではない,自分には価値がない」というイメージを持っています。つまり,不安型の人は,自己肯定感 = 自尊心が低いのです*2

子供に対する過大な干渉・要求などが,不安型アタッチメントの形成につながるようです *3。おそらく,条件付きの承認を経験することが,自尊心の水準を低めるのではないでしょうか。

不安型の人は,他のタイプの人より強く他者の承認を求めており,恋愛においては,一目惚れしやすく,恋に落ちやすく,恋に夢中になりやすいことが分かっています*4

しかし,不安型の人の恋愛は, 安定型の人の恋愛に比べて,長続きせず*5,特に「くっついたり離れたり(on and off)」の恋愛をする傾向があります*6

誰よりも愛を求めているはずの不安型の恋愛は,なぜ,うまくいかないのでしょうか。

悲しき予言の自己成就

結論から言うと,自分に自信がない不安型の人は,相手に拒否されることを心のどこかで予測しており,その予測に伴う認知・行動が,予測を実現してしまうためです。これを自己成就的予言(self-fulfilling prophecy)と言います。

外に見える不安

不安型の人は,相手に承認されたいと誰よりも願っています。一方,自分に自信がないため,相手に拒否されることを心のどこかで予測し恐れています。このアンビバレンスは,新しい人間関係を作る場面 = 相手に拒否されるリスクが高い場面で強くなります。

その結果,不安型の人は初対面の相手に,不明瞭・不安定な声,気まずい沈黙など「外に見える不安(manifest anxiety)」を示してしまうため,相手に悪い印象を与え,恋愛対象として選ばれる可能性が低くなるのです *7

不安による束縛

また,拒否を心のどこかで予測している不安型の人は,少しのことでも関係の危機と捉える傾向があります。例えば,不安型の人は嫉妬しやすく*8,相手の中立的な行動を浮気と捉えやすいことが分かっています*9

そのため,不安型の人は他のタイプの人より配偶者保持行動(mate retention behavior:相手の浮気や恋愛関係の消滅を避けるための行動)をとる傾向があります。例えば,不要に相手の場所を電話で確認したり,相手の時間を独占して社交の機会を奪ったり, 相手が他の異性と親しくしたときに激怒したりします*10

このような行動を,費用負荷型(cost-inflicting)配偶者保持行動と呼びます。配偶者保持行動には, 相手の容姿を褒めたり,プレゼントをあげたり,といった利益供与型(benefit-provisioning)の行動もありますが,利益供与型の行動をとるリソースがなく,費用負荷的な行動に頼ってしまうと,相手の関係満足度を低める可能性があります*11

罪悪感の操作

また,相手の行動に拒否を読みとる不安型の人は少しのことに深く傷つき,そのような場合,自分がどんなに傷ついたか強調し,相手をどれだけ愛してきたか思い出させるなど,相手に罪悪感を感じさせる行動(guilt induction strategy)をとる傾向があります。

その結果として,不安型の人のパートナーはより罪悪感を抱きやすくなります。パートナーが罪悪感を示した場合,不安型の人の気持ちは和らぎますが,パートナーの,その恋愛関係に対する満足度は下がってしまうのです*12

不安型の人の恋愛戦略

不安型の人の最も本質的な問題は,自尊心が低いということです。従って,根本的には自尊心を高める必要があります。

以前,人の自尊心は他者による承認の程度を測るソシオメーター(sociometer)であるとする理論を説明しました。他者の承認を感じると上がり,拒否を感じると下がるこのメーターにより,人は集団に所属するよう動機づけられている,とする理論です。

大事なのは,自尊心は自己の資質や能力に対する「主観的な」評価であり,客観的な評価とは相関しないということです*13。つまり,客観的に見て明らかに優秀で魅力的な人でも,非常に低い自尊心を抱えていることはあり得るということです。

不安型の人は, 拒否を示唆する情報に対して敏感に反応するソシオメーターを持っています。そのため,不安型の人の自尊心は他のタイプより不安定で*14,恋愛において感情的な上下を感じやすい*15ことが知られています。

従って,不安型の人が自尊心を高めるために最も有効なのは,自分が安心できる人間関係を充実させることです。表面的な関係を広げても,拒否の可能性を感じてしまうので,自尊心の向上にはあまり意味がないでしょう。

また,パートナーに依存して自尊心を高めるのは本末転倒です。他に自尊心の源泉がないと,関係が少し躓いたとき,上に述べた構造で一気に瓦解するリスクがあるためです。

 

*1:Hazan, C., & Shaver, P. (1987). Romantic love conceptualized as an attachment process. Journal of Personality and Social Psychology, 52(3), 511–524. doi:10.1037/0022-3514.52.3.51

*2:Bartholomew, K., & Horowitz, L. M. (1991). Attachment styles among young adults: A test of a four-caregory model. Journal of Personality and Social Psychology, 61(2), 226–244. doi:10.1037/0022-3514.61.2.226

*3:Hazan & Shaver, 1987

*4:Hazan & Shaver, 1987

*5:Hazan & Shaver, 1987

*6:Kirkpatrick, L., & Hazan, C. (1994). Attachment styles and close relationships: A four-year prospective study. Personal Relationships, 1(2), 123–142. doi:10.1111/j.1475-6811.1994.tb00058.x

*7:これは,外見の魅力を統計的にコントロールした後に残る効果ですので,疑似相関ではありません。

McClure, M. J., & Lydon, J. E. (2014). Anxiety doesn’t become you: How attachment anxiety compromises relational opportunities. Journal of Personality and Social Psychology, 106(1), 89–111. doi:10.1037/a0034532

*8:Hazan & Shaver, 1987

*9:Kruger, D., Fisher, M., Edelstein, R., Chopik, W., Fitzgerald, C., & Strout, S. (2013). Was that Cheating? Perceptions Vary by Sex , Attachment Anxiety , and Behavior, 11(1), 159–171.

*10:配偶者保持行動の全種類は以下を参照。

Buss, D. M., Shackelford, T. K., & McKibbin, W. F. (2008). The Mate Retention Inventory-Short Form (MRI-SF). Personality and Individual Differences, 44(1), 322–334. doi:10.1016/j.paid.2007.08.013

*11:Barbaro, N., Pham, M. N., Shackelford, T. K., & Zeigler-Hill, V. (2016). Insecure romantic attachment dimensions and frequency of mate retention behaviors. Personal Relationships, 23(September), 605–618. doi:10.1111/pere.12146

*12:Overall, N. C., Girme, Y. U., Lemay, E. P., & Hammond, M. D. (2014). Attachment anxiety and reactions to relationship threat: the benefits and costs of inducing guilt in romantic partners. Journal of Personality and Social Psychology, 106(SEPTEMBER), 235–56. doi:10.1037/a0034371

*13:Baumeister, R. F., Campbell, J. D., Krueger, J. I., & Vohs, K. D. (2015). Does High Self-Esteem Cause Better Performance, Interpersonal Success , Happiness , or Healthier Lifestyles ?

*14:拒否のサインに過剰に敏感なのは不安型も回避型も同じなのですが(Downey & Feldman, 1996),不安型においては拒否の知覚が自尊心の急激な低下に結びつき,回避型においてはさほど結びつかないという違いがあります(Srivastava & Beer, 2005)。回避型の人は,相手と親密になりたいという気持ちを抑制することで拒否に対処します。

Srivastava, S., & Beer, J. S. (2005). How self-evaluations relate to being liked by others: Integrating sociometer and attachment perspectives. Journal of Personality and Social Psychology, 89(6), 966–977. doi:10.1037/0022-3514.89.6.966

Downey, G., & Feldman, S. I. (1996). Implications of Rejection Sensitivity for Intimate Relationships. Journal of Personality and Social Psychology, 70(6), 1327–1343. doi:10.1037/0022-3514.70.6.1327

*15:Hazan & Shaver, 1987